【コロワイドと大戸屋】対立の歴史!
コロワイドが大戸屋に対して敵対的TOBを仕掛けたり、経営方針を巡って争ったりするなど、泥沼の争いが繰り広げられています。
この記事では、コロワイドと大戸屋が対立した経緯や内容を時系列順にまとめて紹介します。
目次
創業者の健康問題
2014年頃、大戸屋の実質的な創業者だった三森久実氏は、ガンで余命いくばくもない状況であることを医師に告げられていて、後継体制を整えることが急務になっていました。
功労金問題
2015年3月頃に功労金問題と言われる騒動が発生しました。
久実氏が大戸屋の株式の18.79%を保有しており、このまま遺族に相続すると多額の相続税が発生することが背景にありました。
この相続税問題を解決するため、大戸屋が創業家に対して功労金を拠出しようとしたのですが、メインバンクである三菱UFJ信託銀行(当時三菱信託銀行)や一部の取締役が反対したようです。
久実氏はこれに激怒し、反対した取締役を解任するなどの争いが生じました。
息子の昇格
久実氏には息子の智仁氏がおり、久実氏は将来的に息子を後継者にしたいという思いがありました。
自信の余命がわずかで焦りもあったのか、久実氏は2015年6月に智仁氏を26歳という若さで常務取締役に昇格させました。
将来的に息子を後継者にしたいという思いは周知の事実であったものの、いつ頃後継者にしようとしていたのかは文書が残っていないため、明確になっておらず(一説では、10年後くらいに後継者にしようとしていた、と言われています)、これが問題を複雑化してしまう要因となりました。
後継者への継承
2015年7月に久実氏が亡くなりました。
久実氏の保有株18.79%は、三枝子夫人が13.15%、息子の智仁氏が5.64%を相続することになりました。
久実氏が亡くなった後の経営は、2011年より社長を務めている久実氏の従兄弟の窪田健一氏に委ねられることになりました。
智仁氏は若く目立った実績がなかったため、取締役陣や大戸屋のメインバンクである三菱UFJ信託銀行は窪田氏を社長とすることを支持したようです。
香港赴任の人事
2015年8月3日、智仁氏に10月から香港への赴任を指示しました。
これには大戸屋の将来性を考えると海外展開が重要で、まずは経営が安定している香港で経験を積んで欲しい、という意図があったと窪田氏は主張しています。
ただ、智仁氏は左遷の意図があるのではないか、という疑念を抱いていたようです。
関係性の悪化
2015年8月、智仁氏の香港赴任を前に、窪田氏と智仁氏が久実氏が生前行きたがっていた都内の焼き鳥店で食事をしました。
その際、智仁氏が「僕が正当な後継者だ」と酔った勢いで口にし、それに対して窪田氏が「もっと経験を積んで地べたを這ってやらないと誰もついてこないしそんな簡単な会社じゃない」とたしなめたそうです。
この口論がヒートアップし、ついには窪田氏が「もう会社にこなくていい」と言い出したようです。
この一件から、2人の関係は冷え込むことになりました。
お骨事件
2015年9月8日、大戸屋コンプライアンス第三者委員会がまとめた調査報告書によると、三枝子夫人が久実氏の遺骨をもって、背後に位牌・遺影をもった智仁氏を伴いながら裏口から社長室に入ってきました。
その後、智仁氏が退出して、三枝子夫人と窪田氏が2人になったところで、「あなたは大戸屋の社長として不適格だ。智仁に社長を継がせる」「あなたは会社にも残らせない」「なぜ、智仁が香港に行くのか」「私に相談もなく勝手に決めて」などと述べたようです。
降格人事
2015年11月、智仁氏が常務取締役からヒラの取締役に降格となりました。同時に海外事業本部長からも解任されました。
ただし、この降格については、「意思決定のスピードアップ、組織のフラット化を図るために、専務・常務などの肩書きを廃止したものだ」と窪田氏は説明しています。
取締役退任
2016年2月に智仁氏が一身上の都合で取締役を辞任しました。
株主総会
2016年5月に本決算を発表した後、株主総会で役員人事案を公表し、窪田氏など3名の取締役の残留と8名の新規取締役の選任する案を提示しました。
本人事案については、智仁氏をはじめ創業家の意見も取り入れて決定した、と窪田氏は説明しました。
しかし、智仁氏は「人事案に納得できない。社外取締役で医者の三森教雄氏は久実氏の兄で経営に携わったことがなく疑問だ」と反対を表明し、対立が表面化しました。
なお、この辺りから意見の食い違いが多く、どちらの主張が正しいのかは不明です。
功労金問題解決への模索
会社側と創業家との対立が激化していましたが、創業家としては相続税のために株を売ってしまうと影響力が低下するため、和解を目指して話し合いが幾度も開かれたようです。
その結果、功労金については一定額を支給するため株主総会で発議すること、智仁氏は2年後に経営に参画して当面はアメリカの合弁事業の責任者として特別顧問に就任すること、について合意しました。
これに対し、三枝子夫人は「幸せにしてもらった」などと会社に謝意を伝え、窪田氏も決着がついて安堵していたようです。
しかし、智仁氏は2年後というのは努力目標でしかない、と受け取り後に合意を破棄しました。
功労金が2億円で決着
2017年6月28日、株主総会で久実氏に2億円の功労金を支払うことを決定しました。
しかし、三枝子夫人と智仁氏は、大戸屋株を担保に銀行から借り入れを行い、相続税を支払っていたため、2億円では足りず、2019年10月保有分の全株式を30億円でコロワイドに売却することになりました。
コロワイドは甘太郎、牛角、かっぱ寿司、やきとりセンターなど多数の外食ブランドを保有する大企業であるため、大戸屋を買収して傘下におさめる目的があったと言われています。
コロワイドが経営陣刷新を株主提案
これで決着がついたように見えた大戸屋のお家騒動でしたが、コロワイドが2020年6月の株主総会で経営陣の刷新や経営改善(コロワイドのセントラルキッチンの共同利用や物流共通化によるコスト削減)を求める株主提案を行いました。
コロワイドの案は、12名の取締役のうち5名は窪田氏などの現経営陣で、コロワイド側からは現経営陣の身分を保証する、というメッセージがあったと言われています。
しかし、社外取締役候補の中に智仁氏の名前があったことから、窪田氏ら経営陣は自分たちの身分が保証されているようには受け取らず、反発しました。
コロワイドが智仁氏を推す理由として、創業者の理念の継承者であることを挙げていますが、コロワイドの意見が通りやすくなるという理由もあるものと予想されます。
結果的に、本株主提案は株主からの賛同が足りず、否決されることとなりました。
コロワイドが敵対的TOBを実施
2020年7月9日、コロワイドが大戸屋ホールディングスのTOBを発表しました。実質的な敵対的TOBに相当します。
先述の株主総会での株主提案を実現するため、最大過半数越えの株式取得を目指したものであると推定されます。