韓国はアメリカと「通貨スワップ」を結んだのか?

2020年4月20日


2020年3月19日、韓国の中央銀行である韓国銀行は、アメリカのFRBと600億ドルの「為替スワップ」を結んだと発表しました。

ただ、韓国側の記事によっては「通貨スワップ」となっているものも散見されます。

「為替スワップ」と「通貨スワップ」の違いや、実際の合意内容などについてまとめます。

目次

合意内容

結論から言うと、韓国とアメリカで締結された内容は600億ドルの「為替スワップ」協定です。この為替スワップ協定により、韓国は事前に合意した為替レートで、ウォンと引き換えにドルを受け取ることができます。

なお、アメリカは韓国だけでなく、スウェーデン、ノルウェー、デンマーク、シンガポール、オーストラリア、ニュージーランド、メキシコ、ブラジルとも同様の為替スワップを締結しました。

期間は6か月後の9月19日までで、状況に応じて期間延長がありえます。

「通貨スワップ」と「為替スワップ」の主な違い

「通貨スワップ」は、中央銀行同士がお互いの通貨を融通し合う協定のことです。

一方、「為替スワップ」は、相手方の中央銀行から通貨を融通してもらい、自国の中央銀行から自国の金融機関に供給する協定のことです。

つまり、「為替スワップ」を自国の通貨防衛のための為替介入資金にすることは難しいです。

ただし、自国の金融機関(および銀行から外貨を調達した企業)が、相手国の為替を融通してもらえるため、実質外貨建ての資産が増えるので、金融市場の安定化に資する効果はあります。

為替スワップの効果

ドルの流動性の確保

直近の新型コロナウイルスショックのように、金融市場が不安定化する局面では、世界中で不安定な通貨を売って、安全なドルを買う動きが出ます。

するとドル調達コストが上昇するため、ドルを調達したい企業にとっては負担となります。

アメリカのFRBが為替スワップを締結してあげることで、相手国の市中銀行はドルを手に入れることができるので、ドルの流動性が上がり、調達コストの上昇を抑えることができます

金融市場の安定化

「通貨スワップ」とは違いますが、ドルの流動性が確保されることで、韓国内のドル調達が楽になるため、韓国の金融市場の安定化に資します

なぜアメリカは為替スワップを結んだか?

アメリカ企業への支援

景気が悪化すると、各国からアメリカの企業が撤退する傾向があります。

撤退時には、現地の通貨は不要となるので、現地通貨を売ってドルを調達することになります。

通貨危機が生じるとこれが不可能になるので、アメリカ企業の撤退に備えて、ドル資金を枯渇させないために為替スワップを結んでいる、という人も一部います。

金融市場のパニックの予防

「為替スワップ」「通貨スワップ」は、一応両国が恩恵を受ける協定になっていますが、現実問題としては多くの場合、通貨が強い国が弱い国を救済することを意味しています。今回の事例の場合は、アメリカのFRBが通貨の弱い各国を救済してあげていることに相当します。

通貨の弱い国でドル調達が難しくなると、ドル調達できない会社が倒産してしまう危険性もあるため、金融市場がパニックになる可能性があります。

金融市場がパニックになると、その余波が世界中に及び、結果的にアメリカも被害を受けてしまうので、FRBとしてはドル資金を通貨が脆弱な各国に供給してあげることで、ドルの流動性をもたらし、金融市場のパニックを未然に防ぐ狙いがあります。