NISAで原油ETFを買わないで!ほぼ損します!


証券会社の発表によると、直近の新型コロナウイルスで株価が暴落したため、個人投資家が大挙して口座を開設しているようです。

投資初心者が増えたためか、SBI証券が公開しているNISAの買付金額ランキングで、原油のETFが軒並み上位にランクインしているようです。

ただ、NISAで原油ETFを購入することはおススメできません。

その理由について詳しく解説します。

目次

NISAで原油ETFを買ってはいけない理由

NISAで原油ETFを買ってはいけない理由は、原油ETFはその仕組み上、長期ではほぼ必ず下落するようにできている投資商品だからです。

具体的には、『NEXT FUNDS NOMURA原油インデックス連動型上場投信(1699)』『WisdomTree WTI原油上場投資信託(1690)』『WTI原油価格連動型上場投信(1671)』『NEXT NOTES 日経・TOCOM 原油 ダブル・ブル ETN(2038)』が該当します。

なぜこれらのETFが長期的に価格が下落していくのかについて解説します。

原油ETFは長期的に下落する理由

原油ETFが長期的に下落する理由を一言で言うと、『コンタンゴ』状態の原油先物を『ロールオーバー』する仕組みになっているためです。

と言っても、何のことかわからない方がほとんどかと思われますので、『コンタンゴ』『ロールオーバー』それぞれについて解説します。

コンタンゴとは?

原油のETFはほとんどの場合、取引量が多い原油先物の価格を基準として採用しています。

例えば、日本で取引量の多い、NEXT FUNDS NOMURA 原油インデックス連動型上場投信(1699)、WTI原油価格連動型上場投信(1671)の場合は、NYMEX(ニューヨーク・マーカンタイル取引所)に上場しているWTI原油先物に連動する形式になっています。

このWTI原油先物がくせ者で、WTI原油先物は、同じ原油が対象資産となりますが、限月(取引期限)ごとに異なる価格で取引されています。

基本的には、原油の保管費用や金利の影響で、より先(未来)の先物価格ほどより高くなります。これをコンタンゴ(順鞘)と言います。

将来的に原油需要が少なくなると予想される局面ではこの限りではありませんが、近年はほとんどコンタンゴ状態となっています。

ロールオーバーとは?

先ほども述べましたが、WTI原油先物は、同じ原油が対象資産となりますが、限月(取引期限)ごとに異なる価格で取引されています。

したがって、取引期限を迎えるたびに、次の取引期限の先物に乗り換える必要があり、取引期限では不連続な価格変化が生じます

この不連続な価格変化を消すために、原油ETFでは買う数量を調整することで運用されています。

ロールオーバーの例

ロールオーバーする日に、1月期限の原油先物を20ドルで100枚買建で持っていたとします。原油先物は1か月ごとの期限が存在しますが、2月期限の原油先物25ドルにロールオーバーしたとします。

すると、ロールオーバー前は20ドル×100枚=2000ドルなので、ロールオーバー後は2000ドル÷25ドル=80枚に減ることになります。

この場合、原油が1ドル上昇した場合、ロールオーバー前は1ドル×100枚=100ドルの利益となりますが、ロールオーバー後は1ドル×80枚=80ドルの利益に目減りしてしまうことになります。

【参考】原油ETFの注意点

注意点1:原油ETFに不連続な価格変化は生じない

原油ETFの取引ではこのロールオーバーまでの残りの日数を逆算して、日々ロールオーバー分のコストを考慮しながら取引されているので、不連続な価格変化は生じません。

注意点2:ロールオーバー分は業者の利益ではない

たまに勘違いされる方がいますが、ロールオーバーで生じるETF価値の棄損は、ETFの業者が利益を得ているわけではなく、先物市場の構造上生じるもので避けることができないものです。

先物なので厳密には市場参加者の需要予測による変動がありますが、原則は原油の保管料と金利がかかるため、これは仕方のないことです。

なお、ETF価値の棄損分はETFを売建した際に得ることができます。実質的に保管料と金利分を負担しているイメージです。