「原油ETF」と「原油価格」は乖離する!
直近の原油価格の暴落に伴い、原油への投資を始めたい方が増えていると思います。
原油へ投資する上で最も簡単な方法は原油のETFを売買することですが、「原油ETFと原油価格は乖離する」ことに気を付けなければなりません。
この記事では、なぜ原油ETFと原油価格に乖離が生じるかについて解説します。

目次
原油ETFと原油価格に差が生じる理由
原油ETFと原油価格には差が生じてしまいます。その理由を以下に示します。
ここに差が生じてしまうため、原油のETFは長期で買い持ちすると損してしまいます。
ロールオーバー
ロールオーバーの仕組みを理解できていないまま原油のETFに投資してしまう投資家も多いようで、混乱を招く点ですが、ロールオーバーはとても重要なポイントです。
原油のETFはほとんどの場合、取引量が多い原油先物の価格を基準として採用しています。
例えば、日本で取引量の多い、NEXT FUNDS NOMURA 原油インデックス連動型上場投信(1699)、WTI原油価格連動型上場投信(1671)の場合は、NYMEX(ニューヨーク・マーカンタイル取引所)に上場しているWTI原油先物に連動する形式になっています。
このWTI原油先物がくせ者で、WTI原油先物は、同じ原油が対象資産となりますが、限月(取引期限)ごとに異なる価格で取引されています。
したがって、取引期限を迎えるたびに、次の取引期限の先物に乗り換える必要があり、取引期限では不連続な価格変化が生じます。
基本的には、原油の保管費用や金利の影響で、より先(未来)の先物価格ほどより高くなります。これをコンタンゴ(順鞘)と言います。
将来的に原油需要が少なくなると予想される局面ではこの限りではありませんが、近年はほとんどコンタンゴ状態となっています。したがって、コンタンゴ状態で、長期で原油ETFを買建すると損することになります。
ロールオーバーの例
ロールオーバーする日に、1月期限の原油先物を20ドルで100枚買建で持っていたとします。原油先物は1か月ごとの期限が存在しますが、2月期限の原油先物25ドルにロールオーバーしたとします。
すると、ロールオーバー前は20ドル×100枚=2000ドルなので、ロールオーバー後は2000ドル÷25ドル=80枚に減ることになります。
この場合、原油が1ドル上昇した場合、ロールオーバー前は1ドル×100枚=100ドルの利益となりますが、ロールオーバー後は1ドル×80枚=80ドルの利益に目減りしてしまうことになります。
注意点1:原油ETFに不連続な価格変化は生じない
原油ETFの取引ではこのロールオーバーまでの残りの日数を逆算して、日々ロールオーバー分のコストを考慮しながら取引されているので、不連続な価格変化は生じません。
注意点2:ロールオーバー分は業者の利益ではない
たまに勘違いされる方がいますが、ロールオーバーで生じるETF価値の棄損は、ETFの業者が利益を得ているわけではなく、先物市場の構造上生じるもので避けることができないものです。
先物なので厳密には市場参加者の需要予測による変動がありますが、原則は原油の保管料と金利がかかるため、これは仕方のないことです。
なお、ETF価値の棄損分はETFを売建した際に得ることができます。実質的に保管料と金利分を負担しているイメージです。
原油価格と原油先物価格の乖離
先にも述べましたが、原油先物の場合、原油を受け渡す日までの保管費用と金利を負担しなければならないため、原油価格とは乖離します。
また、将来的な需給見通しによっても乖離が生じます。
原油ETFは先物を基準にしているので、結果的に原油ETFと原油価格には乖離が生じます。
取引所でのETFの価格と基準価格の乖離
これは原則あまり大きくなりませんが、一方的に買いたい/売りたい人が取引所に殺到すると、本来の基準価格よりも高い/安い価格で取引されることがあります。
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