『MMT理論(現代貨幣理論)』とは?問題点を解説!


MMT理論(現代貨幣理論)が経済学者や知識人の間で討論されることが多くなりました。

左派のれいわ新選組や経済評論家の三橋貴明氏などが賛成派の代表です。

この記事では、MMT理論とは何か、問題点はあるのか、などについてまとめます。

目次

MMT理論とは?

MMT理論とは、日本語で現代貨幣理論(Modern Monetary Theory)のことで、ニューヨーク州立大学のステファニー・ケルトン教授が提案した理論です。

一言で言うと、『自国通貨であればいくら政府が借金をしても債務不履行(デフォルト)とならず、財政は破綻しない。借金の限度はインフレ率によって決められる』という理論です。

従来の財政理論では、『政府の収入(税収)と支出は均衡であるべき』というのが原則でしたが、MMT理論では自国建て通貨での国債であれば、均衡財政を無視して、支出を増やす(借金を増やす)ことを許容します。

ただし、支出が大きくなると、市場ではインフレ圧力がかかり、あまりにも政府が支出を増やしすぎると大きなインフレになってしまう可能性があります。

MMT理論が成立する条件

自国に通貨発行権があること

自国通貨を独立して発行できる国が、自国通貨建てで借金をする分には、新たに貨幣を発行すれば借金を返済できるため、デフォルトに陥ることはありません。

一方で、自国通貨を独立して発行できない国の場合、いずれは返済しなければならないため、デフォルトに陥る可能性があります。

例えば、EUの場合、共通の通貨であるユーロを使っているため、イタリア、スペインといった1国だけの都合で新たに貨幣を発行することはできません。

したがって、EUにおいてはMMT理論は成立しえません。

自国通貨建てで借金していること

自国通貨建てで借金をしている場合は、新たに貨幣を発行すれば借金を返済できるため、デフォルトに陥ることはありません。

一方、外国通貨建てで借金をしている場合、自国通貨の価値が暴落した場合、為替レートの問題で、返済できなくなる可能性があります。

過度なインフレが生じないこと

過度なインフレ(ハイパーインフレ)が生じるとMMT理論が成り立ちません。

例えば、毎日100%のハイパーインフレが生じたと仮定すると、今日1個100円のリンゴが明日には200円、明後日には400円になることを意味しています。

その場合、給料をもらったらすぐ使わないといけないでしょうし、貯蓄で生活している高齢者は生活がほぼ不可能になってしまいます。

そのため、ハイパーインフレが起こると貨幣としての信頼がなくなってしまい、誰もその通貨を使わなくなってしまいます。

例えば、ジンバブエなどではハイパーインフレで自国通貨(ジンバブエドル)が信頼されなくなり、ジンバブエ国内でもジンバブエドルでの支払いを拒否し、米ドルや南アフリカランドなどの外貨での支払いしかできない店が増え、最終的にはジンバブエドルは消滅することとなりました。

問題点

自国通貨が暴落する危険性がある

度を超えた政府の財政赤字を許容する場合、利払いも考慮すると雪だるま式に借金が増加してしまいます。

すると、中央銀行はいずれ金利を引き下げるなどの対応に追われるため、(金利が付かないので)通貨として魅力がなくなり、通貨が売られる危険性があります。

ハイパーインフレになる危険性がある

MMT理論は『借金の限度はインフレ率によって決められる』ということになっていますが、度を超えて政府が赤字を垂れ流す場合、雪だるま式に借金が増加することで、インフレに歯止めがかからなくなる可能性があります。

投機勢からの空売りにさらされる危険性がある

投機勢が通貨の暴落を見越して巨額の空売りを仕掛けてくる可能性があります。

自国の通貨が投機勢によって売られる場合、政府/中央銀行は、保有している外貨を売って対抗しなければなりませんが、外貨準備高が底をつくと、自国通貨が紙くずになってしまいます。

肯定派の意見

慢性的なデフレ

日本は慢性的なデフレに陥っており、インフレになる兆しがありません。

したがって、ハイパーインフレになることは考えにくく、財政赤字をある程度のところでうまくコントロールすれば問題ない、とする意見があります。

日本こそMMT理論を実践している

日本政府は慢性的な財政赤字状態ですが、今のところハイパーインフレになったり、円が大暴落する気配はありません。

実質的に日本政府はMMT理論の状態にあり、MMT理論がうまくいくことを実践しているのは日本だ、と指摘されることがしばしばあります。

MMT理論は現在の財政赤字の延長線上にあるため、景気が良くなるまでどんどん支出を増やすべきだ、と主張する人もいます。