SPAC上場制度とは?その仕組みをやさしく解説!


新型コロナ以降、SPAC上場制度という仕組みが大きな話題となりました。

SPACは通称、「空箱上場」と言われており、コロナ禍以降の堅調な相場もあって、バブルの象徴のような扱いを受けることもありました。

一方でSPAC自体にはメリットもあるため、日本でもSPACを認めるかどうかについて議論が活発に行われています。

この記事では、SPACの概要、メリット、デメリット、過去の事例などについてまとめます。

目次

SAPC上場制度とは?

SPACの概要

SPACとは、Special Purpose Acquisition Companyの頭文字を取った略語で、日本語では特別買収目的会社と訳されます。

SPACは「特別買収目的会社」という文字通り、買収を目的として作られた会社のことで、上場時点では名前だけのペーパーカンパニーであるため、「空箱上場」と例えられます。

SPAC上場制度を用いた場合、SPAC(ペーパーカンパニー)を上場(IPO)させて、株式市場から資金調達を行います。

その資金を用いて非上場企業を買収・合併した後、その非上場企業を後続とすることで、実質的に上場させることが一般的です。

日本の東京証券取引所ではSPAC上場は認められていませんが、アメリカ・イギリス・ドイツ・フランス・韓国などの主要国ではSPAC上場が実施されています。

SPACの仕組み

SPACの仕組み・流れを以下にまとめます。

  1. 「スポンサー」(運営者)がSPACを立ち上げます。一般的には知見のある投資家がスポンサーになります。
  2. スポンサーがSPACを上場し、投資家から広く資金を集めます。
  3. スポンサーは、集めた資金を元に、買収のターゲットとなる会社の候補を決定し、交渉します。
  4. 買収される側の企業とSPACのスポンサーが合意に至ると、買った企業とSPACの会社を合併させます。
  5. 合併後の会社を実質的な後続として、上場したまま事業を継続します。この際の企業名は買収した会社のものに変更されるケースが多いです。

SPACで重要となるのが、スポンサーの存在で、スポンサーがいかに有望な企業を安く買収できるかが要になっています。

なお、投資家保護のため、SPAC上場にはいくつかの制限が設けられています。

例えば、投資家から集めた資金は持ち逃げされないように信託され、買収以外の目的に使用することができないようになっています。

また、SPACで買収する企業に賛成できない場合、投資家は異を唱えることができ、一定数以上の株主が反対すると、出資した資金の返還を求めることができます。

なお、資金の返還の際には金利ももらえる可能性があります。

SPACのメリット

企業側のメリット

審査が簡略化されている

従来のIPOは投資家保護のために、かなり慎重な審査が行われます。そのため、審査にかなり時間がかかり、2年前後はかかるとされています。

一方で、SPACは最初、空箱で上場しているため、審査するのに時間がかからず、数カ月程度で上場できます。

審査に時間がかかると、相場の急変があった際に対応できないため、市況が良い時を狙って上場するのが難しいですが、SPACは審査に時間が短い分、相場の急変に対応しやすい点が利点です。

また、審査が簡略化されている分、費用負担も相対的に小さくなっています。

企業価値が買収側/被買収側で決定できる

買収される企業からすると、自分達が納得した企業価値で売却することができますし、買収する側(SPAC)としても納得した企業価値で買収することができます。

SPACには一般的に経験のある有名な投資家が管理しているため、あまり知名度のない非上場企業だと、彼らの信用力を活かして資金調達することができるというメリットもあります。

投資家のメリット

未公開株に少額から投資できる

SPACは多くの投資家から資金を調達するため、小口で売買されていることが多いので、少額から投資することができます。

いつでも売買できる

上場しているので、いつでも売買することができます。

当たり前のことのように感じるかもしれませんが、非上場企業だと基本的に株を誰かに売ることができないため、この点はメリットになります。

投資家保護の規定がある

一般的に、個人投資家では未公開株へは投資できなかったり、投資家保護がされていない状態での投資になったりするなど、かなりハードルの高い状態となっています。

SPACは簡易化されているとはいえ、当局の規制・監視があるため、不正ができないような仕組みとなっているので、安心して投資できます。

SPACのデメリット

企業側のデメリット

期間が限られている

SPACは不正を防ぐ目的で、買収の12カ月-18カ月前から情報を公開して、24カ月以内に買収を完了させることが義務付けられています。

仮に買収できないと投資家に資金を返還する義務があるため、SPACのスポンサーが実質的に損失を抱える(SPAC上場の際の審査・手数料・金利負担など)ことになります。

そのため、期限が近付いてくると、被買収側の企業から足元を見られて、買収価格を吊り上げられてしまうリスクがあります。

これはSPACに投資している投資家にとっても不利益となりえます。

買収が成功しない可能性がある

期限が過ぎてしまったり、SPACの投資家がその買収を承認しなかった場合、買収が失敗します。

投資家のデメリット

割高な株をつかまされる可能性がある

個人投資家ではなかなか企業価値を算出することが難しいため、仮に割高な価格での買収になったりすると、損を被る可能性があります。

既存のIPOに比べると投資リスクは依然大きい

SPACが買収した企業は元々非上場の企業であるため、審査が綿密にされておらず、不正等が後々発覚するリスクがあります。

2020年6月に上場した、アメリカの二コラ社(電気自動車・燃料電池車メーカー)が技術的な詐欺行為をしていたことなどが明るみになり、株価が暴落する事件がおきました。

プロモーションビデオでは、二コラの電動技術でトラックが走っているような動画だったのですが、実際には走行しておらず、坂道を転がり落としていただけだったそうです。

この事件をきっかけに、アメリカの規制当局はSPACの審査をより注意深くすることを検討しているようです。

SPAC上場した事例

ヴァージン・ギャラクティック(SPCE)

ヴァージン・ギャラクティックは欧米で著名な人物である、リチャード・ブランソン氏が創業した宇宙旅行会社です。

2019年10月にSPACの仕組みを用いて上場しました。

ドラフト・キングス(DKNG)

ドラフト・キングスはアメリカのカジノなどのギャンブルを運営している会社です。2019年12月にSPACを用いて上場することを発表し、翌年4月にSPACと合併を完了しました。

SPAC上場時は10ドル程度だった株価が最高74ドルまで上昇するなど、かなり値上がりしたことが話題となり、近年のSPACブームの火付け役だと言われるようになりました。